七人の俳優たちの稽古場日誌
稽古15日目
「考える。想像する。」
記録者 高信すみれ
戦争は、敵を排除します。
文化は、異なるものを異なるまま受け入れ、共に生きていきます。
戦争は、敵の死を求め、ただの数として扱います。
文化は、死を記憶へと変え、継承していきます。
戦争は、人間が「共に生きることに耐えられない」と思ったときに起こります。
文化とは、人間が「ただ生きるだけでは足りない」と思ったときに生まれます。
私たち市民は、武力を持ちません。
けれど私たちには、文化があります。
「傷口は広がりますか?
戦後とはいつまでですか?
音楽は凍りますか?
地球はいくらですか?」
寺山修司が編んだ『ハイテーン詩集』にある言葉です。
時折、考えます。
今は本当に戦争のない「平和な時代」なのでしょうか?
いまは「戦前」かもしれないことに、目を背けてはいないでしょうか?
あるいは、背けることこそが普通だと思い込まされてはいないでしょうか?
答えの出ないことを問い続けるのは無意味でしょうか?
私たちには想像力があります。
今を疑うことができます。
そして私たちは、自分が自分であることを選ぶ権利を持っています。
その権利を奪うことは、何があっても許してはならない。
結局、行き着くのはそんな当たり前の結論です。
では、戦争が始まる前の、本当に直前かもしれないこの時代に、私たちが「私たち」として生きていくために何ができるのか?
考える。
想像する。
とてつもなく大きなものを前にしたとき、人は「戦っている」と自覚するほどに想像力を失います。
けれど、その壁の前に立っているのは自分ひとりではありません。同じ壁の前に、同じ文化の力を持った人間が立っています。
そのことに気づくことができたなら。
幸せな世界を、ほんの少しでも想像できたなら。
私たちはきっと、もう少しだけ優しくなれるはずです。
そんな、「想像力」の物語が間もなく開幕します。
男七人の俳優たちによる、アツい青春劇です。
本当にバカらしくて、ドキドキするほどに真っ直ぐで、もれなく全員愛おしい!全員に幸せになってくれ〜!と毎回思っています。それなのに、そんな人間たちなのに、戦争は起きるのです。
七人は、戦争が始まった世界でなにを考え、想像し、戦うのか?
そしてあなたは、戦争始まったけど、どうする?
12日から、吉祥寺シアターにてお待ちしております!

稽古14日目
「最大瞬間風速」
記録者 新垣亘平
おれの身体はどうやらイカれちまったらしい。
大声を出すと吐瀉物をぶちまけそうになるし、
2回飛び跳ねただけで汗が噴き出す。
視界にはずっと紫の羽虫の大群が飛び回り、
頭の中でずっと声が聞こえる。
「彼らの痛みはこんなものではない」
地が怠惰な自分にとっては、この状態は
これはこれで使えるか、ってなもんだが
友達や家族はすぐに病院に行けと言う。
病院は嫌いだ。
産まれた時も病院で、死ぬ時も恐らく病院。
多くの現代人がそうでしょう、きっと。
つまり、おれは仮退院中の身だ。
だったらそれ以外は極力行きたくない。
心電図の音を聞きたくない。
まぁとにかく、今は今を創ろうかなと。
先日、大雨が降りましたね。
もっとすごいよ、沖縄の台風は。
雨風は凄いし、音がもうとにかくうるさい。
たまにドアとか窓とか吹き飛んで、
大自然が家の中にこんにちはしちゃうくらい。
でもひとたび台風が通り過ぎると快晴。
雲一つない青空。心地よい風。
道端にはどこからか飛んできた看板、鉄屑、下着(台風の日に洗濯物干すな)とかが落ちているってのに呑気に照らしやがるんです太陽が。
これがおれの故郷の景色。
このごちゃごちゃ加減。
草の匂いと畑の虫の音と潮風と。
東京にも同じ風はきっと吹いているでしょう。
「昭和は戦争、平成は震災、令和はウイルス。
時代は時代の風が吹く。」
この夏、吉祥寺シアターに風を浴びに来てください。
来てくださった皆さんの明日が晴れるように。

稽古13日目
「風に吹かれて」
記録者 小河智裕
本番まで後4日!!
今回の作品で使われる山岸さんの歌を聞くと、ボブディランの風に吹かれてを思い出します。
「blowin in the wind」ってのは、「漠然としてはっきりしない」という意味の慣用句らしい。
世の中はとかく明確にしたがる。何かの事件があれば、あれは原因がこうこうこうであいつが悪くて、、、とか。
答えは風に舞ってるぜ、ってディランは言ってるけど、じゃあ風に舞ってる答えどうやって掴めばええねんってなるじゃないすか。
それでね、かのウサイン・ボルト氏が桐生祥秀氏との対談で「自然に身を任すことが出来れば、もっと早く走れるはずさ」と言ってるんです。
これ、200m日本記録保持者の末續慎吾氏も同じようなことを話してて。
末續氏は「速さは地面を押すことではなく、地面に委ねること」って言っていまして。
あれ?これは風に舞う答えを見つける1つの方法なんじゃね?って思ったんすよ。
子供の頃はみんなただ、自然に身を任せて風の中に何かを見ていたはずじゃないかなって思うんす。
おれね、大人は嫌いなんすよ。大人にはなりたくねーと思って生きています。
でもいま32でね、そりゃあ大人だよな年齢的には。
では、本質的大人とはなんぞやと。
これはおれ、風に舞ってるモンが分からなくなっちまった人なんじゃねーかと思うんすよ。
自然を分からなくなっちまった奴から大人になっていくんじゃねーの?っておれ思います。
随分漠然とした結論じゃないのよ!と思われそうですが、それもまあ風に吹かれてってことで。眠いんで寝ます。おやすみなさい。

稽古12日目
「想像力と戦争」
記録者 浦川拓海
本番まであと5日。
気の置けない仲間たちのおかげで、テーマの重さに負けず笑顔の毎日です。
体はへとへとですが。
今回の舞台で度々「想像力」という台詞が出てきます。
「想像力」と「戦争」で思い出すのは2001年の9.11の映像です。
あの日、僕は自分の部屋で何気なくテレビをつけて、ビルに飛行機が突っ込むのを観ました。
「またブレアウィッチプロジェクト的な映画かな」と思い、しばらく眺めていたら、一向にストーリーが進まない。
じわじわと「これは現実なんだ」と言う気分と、映画だと勘違いした自分を恥ずかしく思う気持ちが押し寄せてきました。
被害にあった人が現実にいる中、それを新しい映画だと思って眺めていた自分。
今思い出しても「なんて残酷な奴なんだ俺は」と悲しくなります。
それ以降悲しいニュースを観る度に気分が少し落ち込むようになりました。
ノートルダム大聖堂の火災のニュースも、僕は行った事もないし、信者でもないけど、燃える大聖堂をただただ見ていることしか出来ない現地の人達を映像で観て、どれだけの人がこの大聖堂を心の支えにしていたんだろうかと、苦しくなりました。
でも、この小さな苦しさが「想像力」なんだと思うと簡単に手放してはいけないなと思います。
そんな小さな想像力で今回の舞台にも立ち向かっています。
どうか劇場に来て僕たちの想像の力を目撃して下さい。


稽古11日目
「ぼくたちの進化」
記録者 山下直哉
稽古11日目。
これは42歳の山下直哉という1人のおっさんが今、この瞬間、書き留めてみた言葉です。
なので、数時間後にはまた新しい考えとか別の思いが出てきます。
山下直哉の脳みそはフンコロガシが糞を転がすようにコロコロ変わります。
悪しからず。
そんで、
何を書き留めてみたかというと、
いろんな生き物の【進化】について。
ちょいと、Googleさんに進化について問い合わせたところ、
生物学進化…
長い年月をかけて環境によって変化し、より複雑で高度な状態になったり、遺伝子頻度の変化や突然変異、自然選択によって生物が変化する現象、またその過程で共通の祖先から多様な生物が生まれる。
鳥が空を飛べるようになったのも進化。
魚が海を泳げるようになったのも進化。
フンコロガシが糞を転がすようになったのも進化。
馬の視野をもうちょっと頑張れば360度見渡すことが出来たのに、
「これだけ見えれば大丈夫っしょっ!」
て事で結果、
350度までしか見渡せないのも進化。
じゃあヒトの進化とは?
二足歩行になったり、
火を使えるようになったり、
言語を話すようになったり、
またその言語を文字にしたり、
いろんな道具を作ったり、
いろんな武器を作ったり、
住む場所を作ったり、
住む場所を守ったり、
住む場所に名前をつけたり、
それぞれの住む場所に線を引いたり、
その線を「国境」ってつけたり、
住む場所がもっと欲しいと思ったり、、
ヒトはまだまだ進化するのでしょうか?
し続けるのでしょうか?
って事はヒトとヒトの争いがなくなるために皆んなに必死に頑張れば、殺し合うことがないヒトに進化できるのかも。
まだまだヒトは進化出来るって事だ。
42歳の山下直哉も然り。。。
9月12日金曜日、
吉祥寺シアターで、
『戦争始まったけど、どうする?』が幕を開けます。







三上陽永の進化
杉浦一輝の進化
新垣亘平の進化
浦川拓海の進化
小河智裕の進化
京谷晶也の進化
男七人の進化を見届けてください。
稽古10日目
「想い」
記録者 京谷晶也
稽古10日目!!!
日誌も2周目に入りました!本日は荒通し後、作業日でした!前回もでしたがどんどん舞台が出来上がって来まして楽しみですね!!!
演劇というものに初めて触れたのは、兄が出ていた高校演劇でした。
自分はまだ小学生でなんのこっちゃ分からず見ていましたが、
自分も同じ高校に入り、同じ演劇部に入って、同じ演目を演じました。
役者を始めて、高校演劇を含めると8年経ちました。
8年………え???
高校時代に青森演劇祭というイベントにぽこぽこクラブが参加しており、そこで初めて存在を知りました。
私はその時、人生で初めて東京で活躍している方を見て、とてもかっこよくて。
そこからずっと私の憧れでした。
そしてついに!そのぽこぽこクラブさんに客演することになりまして!
めちゃくちゃ緊張しております!!
いつもの自分を出せてない感も感じつつ、初めての役柄、初めて三上さんの演出を受け、初めて共演する先輩方の演技を見て、とても圧倒されております!
正直!
それでも!キャスティングされた以上は少しは認めていただいたと思いこんで全身全霊くらいついて、くらい尽くしてみせます!
先輩方も観客の皆様も驚かすような芝居を致しますので!!是非ご来場くださいませ!!!
吉祥寺シアターでお待ちしております!!!

